~共通テスト元年
「センター試験」が「共通テスト」に代わり、様々なことが話題となりましたが、今回のブログでは、第1回目の共通テストの国語について、魚津事務局の宮井徹先生が感じられたことを寄稿してもらいました。来年以降、共通テストを受ける方に参考になると思いますので、以下に掲載しておきます。
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コロナ禍は予想をはるかに越える長期間にわたって続きましたが、日本ではようやく5月後半から、ワクチン接種が本格的に始まりました。
いかに科学が進歩しても、人類の認識と知恵の及ばない範囲はまだまだ広いことが痛感させられます。コロナ禍はいずれ終るでしょうが、この経験を無駄にしないように、私たちは謙虚に学び続けていかなければなりません。
- 新共通テスト国語の振り返り
今年の1月に実施された国語新共通テストでは、従来のセンター試験からの変化は、予想に反した小さなものに終わりました。多くの休校措置があったことも考慮されたのか、設問の難易度も例年とさほど変わりませんでした。しかし、形式が新しくなったことの心理的な影響が受験生にはあったでしょうから、総合的に「やや難化」という評価が妥当かと思われます。目玉となると言われていた「複数テクスト」の試み(つまり、問題文と、サブのテクストで、試験を作る)は、やや消極的な形に終わったようです。「テクスト」と書いているのは、その言葉で意味されるものが文章に限定されず、写真や図表や統計資料なども含まれるという理由からですが、今回の新共通テストではサブのテクストは短い文章だけにとどまりました。受験生に負担とならない情報量に抑える意図があったかもしれません。以下に、サブのテクスト(【】で示す)がどのように使われていたか紹介します。
①論説文……香川雅信『江戸の妖怪革命』の序章の一部より出題。
架空の生徒Nが作成した【ノート1】~【ノート2】によって本文の構成と要旨をつかませる。
さらに【ノート3】で芥川龍之介「歯車」から引用し、本文の一つの主題の考察を深めさせる。
②小説……加能作次郎「羽織と時計」の一説から出題。
この小説に対する同時代の批評を【資料】として掲載し、文章表現の効果について考察させる。
③古文……『栄花物語』の一節より出題。
この一節での和歌Xに対する別の返歌Zを【文章】内で紹介し、短歌の内容について考察させる。
④漢文……馬車を操縦する「御術」についての文章。
【問題文Ⅰ】は欧陽脩『欧陽文忠公集』からの詩。【問題文Ⅱ】は『韓非子』からの短文。ただし、この
二つのテクストは「御術」対して総合的に考察するために、どちらがサブでもなく同等に扱われている。
①での「架空の生徒のノート」という設定では、設問としては簡単過ぎたかもしれません。ただ、本文を把握するための枠組みのモデルとしては、非常に参考になるのではないでしょうか。国語の文章読解問題とは、「細部と全体」を常に往復しながら、提示された枠組みを明確にし、その内部(内容や出来事)のイメージを深めていく作業です。その「枠組み」を提示するのは出題者であり、「内容や出来事」とは「正解を導くための情報」という観点から出題者が要求するものとしてだけ、読み取れればよいのです。そこが通常の読書との違いです。
余談ですが②の加能作次郎という作家は石川県出身で、「知る人ぞ知る」という存在です。そういう地味ながら誠実に取り組んできた作家に、このような形で光が当たることは、私個人としては非常にうれしいことでした。こうした試験などをきっかけにして皆さんには、文芸作品だけでなく、自分の興味のある分野の著書に触れて、純粋に自分のためだけの読書体験というものも重ねていっていただきたいと願います。 (以上、宮井徹先生)
これからも受験生に役立つ情報を発信していきたいと思います。KATEKYO魚津・滑川 教務責任者 倉元 吉則
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